その昔、フランスにきて間もないころ、通勤は電車だった。
シャンゼリゼエトワールで乗り換え、RER A線でパリから北西へ3方面へ別れるうちの一番北へ。
終点から2つほど手前の駅で降りてバス。
文章にすると単純なこの道程に何度も何度も間違えた。
あまりにも頻繁に迷うので、こんな簡単なことさえできない自分に自信喪失しそうだったときもある。
なにしろ、電車には行き先が書いてない。
書いてあるのはAHKTなどの意味不明のアルファベットの羅列。
きちんとした行き先を確認するにはどうするのかといえば、駅のホームに出ている
全駅名掲示板を見る。
この駅名の左のランプが点灯していればその駅には止まりますの意味。
その意味を理解したのがたしか通勤2日目。
パリのメトロじゃ必要ないから掲示板の存在すら知らない。
目指す駅に着いてからも一苦労。
聞いていたバスの番号と同じ番号のバス停は3つある。
バス停表を見ればすぐじゃない、と思ってもそのバス停表の見方を理解する前に
肝心のバスが来てしまうのだ。
これを逃しては次いつ来るかわからないから乗ってしまう。
すると、大抵間違えている。
一度なんて、別の遠い駅の終点に連れていかれて
運転手さんにここからどうやって目的地に行けるのかを尋ねてたどり着いたこともある。
あの町はかわいい町だったなーと妙な記憶があるけども、まだ再訪してない。Pontoiseかな。
最初にバス停で周りの人に聞けばよかったのよ、と今は簡単に思う。
当時は日本での習慣しか知らない状態だったので、たどり着かないとか同じ番号が3つあるとか、
そんなことは想像さえしていない。
だから事前に誰かに聞くという発想もないし、質問事項も頭に浮かばない。
思えば私のここでの生活は全部「質問さえ浮かばない」ということの繰り返し。
それでもなんとか生きていけるものです。
なかでも一番困ったのは、突然はじまるストや乗車中の故障。
事前に予告のあるストはまだしも、乗務員が乗客に殴られたことに抗議して「連帯」を示し
翌日から突然始まるストなどもよくある。
今なら朝のニュースで事前の心構えができているけど、
当時はニュースなんて音を聞いてるだけ。単語じゃない。
わからないまま外に出ると電車はない、という状況で指示される別の駅へ移動して
そこから出発する可能性のある電車を探す。
それでも直前までどのホームから出るのかがわからないので、
大勢の人ががカタカタカタと回るあのとても味のある電車運行表の前で待つ。
こういうやつ↓
ここに情報が載ると大抵数分後には出発だから、ダッシュで電車に乗り込む、というのが通例。
たどり着くまでに疲れ果ててしまって、会社のある駅に着いてからバスもない、
タクシーもないという状況に嫌気が差して「今日は帰る~」とふてくされて帰ったことも2度3度。
なんでこんなことを書いたかと言えば、今朝も突然ストが始まったから思い出したのです。
23日にストが予定されているけど、今日のは、予行練習? まさか。
10年経ってもあまり変わらないパリの通勤事情。